モノづくりスタートアップが世界中から集い、競う! ピッツバーグの世界大会「Hardware Cup 2017」へ日本からも挑戦
モノづくり起業 推進協議会の米国視察ツアーにライターとして同行した、マーケティングPRプロデューサーの西山 裕子です。
今回から3回にわたって、2017年4月17日から4月20日まで開催された、米国視察ツアーについてまとめたいと思います。まずは4月19日に米ピッツバーグで開催されたInternational Hardware Cup 2017についてレポートします。
ピッツバーグ開催の意義
Hardware Cupは、モノづくりに関わるスタートアップのビジネスコンテストです。過去3年アメリカ国内で行われ、今年は海外に拡大されました。2017年4月19日、米国の7都市、カナダ・インド・イスラエル・韓国・日本の予選を勝ち抜いた起業家12人が、この街にやって来ました。
主催するのは、全米トップランクのアクセラレーターであるAlphaLabのハードウェア部門であるAlphaLab Gear。決勝のイベント会場も提供しています。ハードウェアとソフトウェアのスタートアップがアクセラレーター・プログラムの開催期間中、働くだけでなく交流する場として、使いやすくお洒落なオフィスが提供されています。
AlphaLab Gearは、大学・産業界・行政・投資家などと連携し、ピッツバーグにスタートアップのエコシステムを創出しています。代表のIlana Diamond氏は「開催にあたり、多くの支援が得られたことに深く感謝します。財政的な基盤がないと、このようなイベントはできません。資金や会場を援助いただき、顧客となってもらうことがスタートアップの成長にとって、大変重要です」と、オープニングの挨拶をしました。今回のピッチコンテストは、企業や地域コミュニティをはじめ、多くのスポンサーが支えています。一位の賞金は、5万ドルの出資になります。
ピッツバーグはかつて鉄鋼の街として栄えていましたが、1970年代、安価な鉄鋼の輸入が増え大打撃を受けました。しかしその後、ハイテク・保険・教育・金融へと産業基盤を転換し、カーネギーメロン大学など全米トップクラスの大学が研究を進め人材輩出をしてきました。今やGoogleやApple、Uberなどの先端企業がオフィスを開き、成長を続ける、注目の地方都市です。
次世代を創るか?スタートアップ12社のビジネスプラン
コンテストの審査員7名は、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家で、スタートアップとビジネス経験が豊富な目利き達。そして、メディアや投資家、事業会社などから100名以上の聴衆が集い、その前で12社が自社のビジネスを4分プレゼンし、3分間の審査員の質問に答えました。
事業内容はモノづくりに関わるものの、業界も分野も多岐にわたり、「スーパーのレジで並ばないよう、スマホで精算をするシステム」「床ずれを早期に見つける器具」「乳幼児が息をしているか、熱はないか、モニタリングする器具」など、様々なビジネスのアイデアや将来性が、熱い思いで語られました。
日本からは、網膜走査型レーザアイウェアの製造販売をする「QDレーザ」が参加し、英語で発表しました。このようなコンテストでは、アメリカ人のプレゼン力・表現力はかなり高く、日本人は英語力のなさもあり圧倒されがちです。
しかしQDレーザの事業開発マネジャー宮内洋宜氏は、ユーモアを交えた、なめらかな発表で聴衆を沸かせ、審査員からの質問に対し的確に回答しました。その技術力の高さや独自性は、高く評価されていました。
QDレーザの渡米に際しては、全日本空輸株式会社(ANA)がスポンサーとして、東京 – ニューヨークの往復航空券を手配していただきました。
コンテストを制したのは?
12社それぞれ独自のアイデアを持っていましたが、優勝したのは、出産後の女性の骨盤底筋を鍛える器具とトレーニングソフトを提供するVaGenie社。2人の子どもの母親であるJulia Rose氏が、ロスアンジェルスで2年前に作った会社です。元々女優をしていたという彼女の発表は、表情豊かで、産後の女性の体の衰えやタブーになっている問題の解決を目指すという、意欲に満ちたものでした。賞金の出資金5万ドルと、2017年5月末に台北で開催されるテクノロジーの展示会COMPUTEXに参加する切符、トロフィーが贈られました。
2位は、リストバンド型のウェアラブル・デバイスを使って健康管理を提供するAtlasで、賞金5000ドルを獲得しました。3位は、ペットの飼い主が留守中に、スマートフォンを使ってボール型のおもちゃで遊ばせるサービスを提供するPlayDateです。
ネットワーキングの夜は続く
コンテストの発表が終わった後は、ブース展示や交流の時が持たれました。日本予選を勝ち抜いた上位3社が出展しました。QDレーザに加え、パーソナルアシスタントロボットを開発している PlenGoer Roboticsと、VR(バーチャル・リアリティ)のコンテンツと連動して複数の香りを表現するVAQSOです。それぞれが、自社の製品を展示ブースでデモンストレーションし、その魅力や可能性を訴えました。
スタートアップとそれを支える人々との熱気は、まだまだ冷めないようでした。
コンテストの前後に、米国東海岸のハードウェア・スタートアップに関わる産官学の動向を視察しました。追って、ニューヨーク編とピッツバーグ編をレポートします。お楽しみに。