Monozukuri Hardware Cup2024開催、1st Prizeに尿路感染症予防デバイス提案のMedlarks

Monozukuri Hardware Cup実行委員会(牧野成将会長=Monozukuri Ventures CEO)は3月8日(金)に、ピッチコンテスト「Monozukuri Hardware Cup(MHC)2024」をオンサイト(京都リサーチパーク)とオンラインで開催した。MHCは、日本のハードウェア・スタートアップのグローバル展開への登竜門として開催しており、今回で8回目。海外のベンチャーキャピタリスト(VC)を含む審査員を前に、英語によるプレゼンテーションで事業プランを披露した。

本戦に通過した7チームの中から、1st prize(第1位)に既存の尿道カテーテルに接続して使用する、尿路感染症(CAUTI)予防デバイスを提案したMedlarksを選出。薬剤耐性菌の発生リスクが低いのが特徴で、ワールドワイドで毎年1,000万件以上に上るCAUTIの予防に寄与する点が評価された。2nd prize(第2位)にはSeaside Robotics、3rd prize(第3位)にリッパーをそれぞれ選出した。

【上位3チーム】

■1st Prize  株式会社Medlarks

■2nd Prize Seaside Robotics

■3rd Prize リッパー株式会社

【主 催】

Monozukuri Hardware Cup実行委員会(モノづくり起業推進協議会、Monozukuri Ventures、事務局:日刊工業新聞社)

【特別主催】京都リサーチパーク

【共 催】KYOTO MAKERS GARAGE

【協 賛】京都リサーチパーク、村田製作所、Monozukuri Ventures、松尾産業、京都試作ネット、モノづくり日本会議

【審査員】

■長野 草太 氏(General Partner & Investment Committee Member of Abies Ventures)

■Hana Jin 氏(General Manager of SOSV/HAX)

■Anna Maruyama 氏(Sony Semiconductor Solutions Corporation)

■1st Prize カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)予防デバイス

【発表者】株式会社Medlarks 代表取締役 兼 共同創業者 松浦 康之

現在、臨床現場で推奨されているCAUTI予防策は、利用期間を可能な限り短縮することや無菌操作での尿道カテーテルの挿入など、医療従事者に順守すべき手順を多く求めている。結果、多数のCAUTIの発生を招いており、効果的な予防策と簡便性が求められていた。

提案する予防デバイスは、ディスポーザブルとなるカプラーと繰り返し使用するデバイス本体から構成。本体には深紫外線LEDを搭載しており、LED照射によりCAUTIの原因菌を殺菌が行える。また、振動によりバイオフィルム形成を抑制する機能を搭載しており、高い予防効果が見込まれる。既存の尿道カテーテルや排尿バッグに接続して使用するため、現在の操作手順で利用することができる。

現在、先行的に日本とインドで尿道カテーテルの殺菌デバイスとして医療機器認証の取得をめざしており、その後、CAUTI予防デバイスの認証取得を得る計画。また、医療機器ディーラーや商社への供給や、尿道カテーテル製造販売会社と連携しての販売を予定しており、デバイス本体の売上に加え、カプラーの交換に伴う定期的な収益の確保が見込まれ、高く評価された。

■2nd Prize 海岸を非侵襲的に清掃するロボットの開発

【発表者】Seaside Robotics 創業者 横岩 良太 氏

海岸で海洋ゴミを1つひとつ拾い上げて回収する清掃ロボットを提案。ハイパースペクトルカメラを搭載するドローンによりゴミの位置を特定し、ハンドおよびアームを搭載するクローラロボットで回収作業を行う。海岸に打ち上げられた海洋ゴミは、重機を用いて回収作業がなされるが、こうした清掃方法は砂浜に生息する生物に悪影響を与える。これに対し、同清掃ロボットは海洋ゴミを1つひとつ拾い上げるため、あたかも自然の浄化作用のように回収できる。こうした特徴から「非侵襲」と表現している。

創業者の横岩氏は、フリーランスで工業デザインなどを手がける。数年前に神奈川県逗子市に引っ越した際に、海洋ゴミ問題の重大さに気づき、同ロボットの開発を着想した。2年後をめどに小ロット生産・販売をめざす。併せて、海洋ゴミの一時保管や太陽光発電による充電が行える施設も設置する。

■3nd Prize 脱炭素社会と豊かな海を実現するナノテクノロジータイヤ強化素材事

【発表者】リッパー株式会社 創業者 兼 CEO 鈴木 幹久 氏

従来のカーボンブラックに代わりナノセルロースの繊維構造を用いたタイヤ補強材を開発、バイオゴム強化材としてタイヤメーカーなどに提案する。

天然ゴムにナノセルロースを高分散化した構造を有し、自然由来の素材のため生分解性が高く、マイクロプラスチック問題の原因となるタイヤ粉じんの清浄化につながる。また、このような構造により耐摩耗性が向上し、タイヤに使用することでCO2およびマイクロプラスチックの排出量を従来比80%まで低減できる。2023年9月に実施したタイヤ走行試験では、耐摩耗性・電力消費ともに約20%の向上を確認した。加えて、カーボンブラックを使用しないため、タイヤのカラーバリエーションの増大につながる。

4月にはレンタサイクル用自転車に搭載し、公道テストを開始。2025年から大手タイヤメーカーによる本格的な量産に入る。

天然ゴムへのナノセルロースの高分散化にかかる配合技術を保有するユニークな点が評価された。