MONOZUKURI HARDWARE CUP2021、1st Prizeにウォーターデザインジャパン選出、5/19にオンラインで世界大会
※本記事は2021年4月28日に、日刊工業新聞に掲載しました特集記事を一部リライト掲載しております。
モノづくり起業推進協議会(会長:株式会社Monozukuri Ventures Holdings CEO 牧野成将)は2月26日(金)に、ピッチコンテスト「MONOZUKURI HARDWARE CUP(MHC) 2021」をオンラインで開催した。
MHCは、日本のハードウェア・スタートアップのグローバル展開への登竜門として開催しており、今回で5回目。本戦に通過した8チームの中から、1st prize(第1位)にウォーターデザインジャパン、2nd prize(第2位)にMagic Shields、3rd prize(第3位)にCYBOを選出した。ウォーターデザインジャパンは、5月19 日(米国時間)にオンラインで開催予定の「2021Hardware Cup International Finals」に出場する。
【上位3チーム】
1st Prize 株式会社ウォーターデザインジャパン
2nd Prize 株式会社 Magic Shields
3nd Prize 株式会社CYBO
【主 催】
モノづくり起業推進協議会
【運 営】
日刊工業新聞社
【協 賛】
京都リサーチパーク、京都信用金庫、クロステック・マネジメント、モノづくり日本会議
【審査員】
セントラル・パシフィックバンク 取締役会長 ポール 与那嶺 氏
村上憲郎事務所代表、前Google日本法人 名誉会長 村上 憲郎 氏
株式会社Clay Tech 代表取締役 九頭龍 雄一郎 氏
■1st Prize
微細な泡(ウルトラファインバブル)で配管の汚れや化学薬品の削減をし、環境問題を解決
【発表者】
株式会社ウォーターデザインジャパン
マーケティング、海外担当 伊藤 夏美 氏
水道管に設置可能なウルトラファインバブル生成ノズル「UFB DUAL」を提供する。水道 水レベルの水圧で水量・水圧を低下することなく連続的にウルトラファインバブル生成できるのが特徴。産業用途にも利用できるよう径の拡大や使用液体に合わせた材質変更を可能としている。
外気を使用せずに水の中に存在する酸素を利用するため外気に含まれる菌の混入リスクがなく、水道機器の認証の取得ならびに飲用適水テストに合格している。
家庭に設置することで水回りの洗浄効果が得られるほか、ガス溶解や保湿効果、植物の発 育促進の可能性効果などもあり、5000個所での導入実績がある。飽和濃度の10倍以上を大気開放下で液中に存在させる特徴から、ガス溶解での用途拡大も見込まれる。そのほか美容や医 療などの分野でも導入実績もあり、病院の透析機械への導入例もある。
同社は 2020 年3月設立。ウォーターデザイン社でスタートアップワールドカップ大阪大会で優勝したほか、テクノロジーとスタートアップの祭典「TechCrunch Disrupt 2020」で登壇するなど海外展開を見すえた活動も進めている。
■2nd Prize
高齢者の転倒による骨折を防ぐ、転んだときだけ柔らかい床「ころやわ」
【発表者】
株式会社 Magic Shields 代表取締役 下村 明司 氏
毎年、100万人の高齢者が転倒により骨折をしているとされ、病院や高齢者施設に勤務する看 護師や介護士は転倒防止に多くの業務時間を費やしている。この課題解決に向け転倒時の み柔らかくなる衝撃吸収床材「ころやわ」を提供する。
歩行安定性と衝撃吸収性を両立したのが特徴。歩いているときは硬く、車椅子や杖て?はへ こまない一方、転倒時はへこんで衝撃を吸収し、骨粗鬆症の大腿骨骨折荷重を下回る。創業者が前職で培った自動車工学における衝突技術と共同創業者の理学療法士の知見を融合して実現した。現在は藤田医科大学・名古屋大学と共同研究を進めている。
2020年8月から病院や高齢者施設に向けて(価格は仕様により複数ありますので、削除しました)直販を開始。4年後には売上高約 20 億円、純利益約6億円を見込む。また、センサーとの組み合わせによる見守りサービスで看護師・介護士の負担軽減につなげるほか、保育園や体育館、乗り物の衝撃吸収材、マンションの消音材としての展開も見すえる。
同社は元ヤマハ発動機のエンジニアや理学療法士など専門家が結集して創業した。
■3nd Prize
病院や検査センターをターゲットにしたガン細胞診ソリューション
【発表者】
株式会社CYBO 代表取締役社長 新田 尚 氏
2018年7月設立の東大発の研究開発型スタートアップ。多数の細胞集団から特定細胞を分離するインテリジェント画像活性セルソーターを基盤技術として、スライド上の細胞を高速かつ自動で撮像する細胞スキャナー装置を提供するとともに、得られたデジタル画像データをAIで解析するSaaSを提供する。
画像活性セルソーターは細胞を超高速で画像化し、AIがその画像を選別し特定細胞を分取する技術。東京大学大学院の合田圭介教授らの研究グループが発表した新技術で、同社代表の新田氏は同グループのプログラムマネージャー補佐を務めた。
既存の細胞識別技術に比して、画像活性セルソルーターでは光の強度に加え、細胞の形状や細胞内の分子の分布なども計測できる特徴から、より高精度な診断が行える。
2021年3月にはインキュベイトファンド(東京都港区)を引受先とした第三者割当増資により6000万円の資金を調達。がん研有明病院と取り組んでいる精度向上や、省力化を両立したAI細胞診システムによる子宮頸ガン検診の実現を目指す共同研究などを推進する。
【審査を代表して】
「シンプルなハードウエア製品がシンプルに問題解決」
株式会社Clay Tech 代表取締役 九頭龍 雄一郎 氏
上位2社の発表には目を見開かれるものがあった。昨今のハードウエア業界はソフトウエア化が進展しており、巨大なプラットフォームとセンサー群にビッグデータとAIで対応する傾向にある。これに対し、両社はシンプルなハードウエア製品がシンプルに問題を解決している。ハードウエア業界ではやり尽くされている感じがある中、シンプルなハードウエア技術で、これほどの社会的意義と市場性、横展開の柔軟性を兼ね揃えた製品ができることに感心した。
また、両社に共通するのは、市場にコストがマッチしていること。ハードウエア製品を開発すると高価格帯になりがちで、興味を持ったアーリーアダプターのみが購入して終わる場合がある。しかし、両社はシンプルであるがゆえ、既存の競合製品と十分に対抗できる価格帯で提案できる点に強みを感じた。
3位の企業は、ガン細胞の早期発見を目的とした一連のシステムを開発している。AIによる分析はすでに多くの取り組みがあり、この一連のシステムによって実現するスピードと精度、すなわちパフォーマンスが他の追随を許さなないレベルまで到達することに事業化のポイントがあるだろう。